お道開きの覚悟 一人を助けるにはいのちがけ

「からっぽ」精神

牧野寅次手紙昭和39年(1964)2月1日に、92歳でご逝去された元同志社総長、牧野虎次先生は、私の恩師の一人です。今年、ちょうど50年となります。

私が同志社に入学した(昭和26年・1951)ころには、すでに総長をお辞めになっていましたが、週に一度はご自宅にお伺いして、先生のお教えをいただきました。そのころから先生の「かばん持ち」をさせていただき、あちこちへお伴させてもらいました。私の結婚式(昭和32年・1957)には、先生が媒酌をしてくださいました。また、昭和38年(1963)の東京へのお道開き間もないころに、わざわざご参拝くださり、お広前で数名の参拝者にお話をしてくださいました。

先生は、孫のような私をこよなく愛してくださり、ことあるごとにいろいろと懇切にご教導を賜りました。いまもなお、私のこころにそのみ教えのひとつひとつが刻みこまれていています。

ご自宅の応接室に「石鹸」と大書された額が掲げられていました。それは、先生が同志社英学校を卒業して、自ら志望して就かれた北海道集治監(現在の刑務所)に教誨師として出発するにあたり、尊敬する先輩、荒尾精先生(当時の大陸問題の権威)にご挨拶されたとき、「いっさいの我をなげすてて、捨て身になれ。石鹸が相手の垢を清めるのは消えてなくなるからだ」と説諭され、「石鹸」と揮毫されたものです。

私の東京お道開きをご報告したときも、牧野先生はこの「石鹸」のことを説き聞かせてくださいました。「東京板橋の新開拓伝道に従事なさるとのこと、洵に勇ましく御祝い申します。何卒、大恩師親先生が三軒家の工場地帯に単身乗り込まれ給いし当初の意気をここに実現を切望いたします。要は『からっぽ』精神です。人間の小知恵、猿知恵を、かなぐり棄てて勇猛邁進することと存じます。古諺に『狙ったら射おとすまでは弓をひけ』とのこと。幸に御愛重、御精進を念願しつつ。」とのお手紙をくださいました。

半世紀以上も前のことでありますが、牧野先生の愛情こもれるおことばを忘れることなく、いただいている私であります。

いのちの横領罪

52年前(昭和38年)の今日、大恩師親先生のご命をうけて、泉尾教会を出発させていただいたとき、お結界から「三宅の家はメグリの深い家である。畳の上で死ねると思うなよ。有り難いことに、お前は神さまから、常盤台という“死に場所”を授かったのだ。一人の人を助けるため、死なせてもらうのだ」とおおせになり、「人を助けるのに、金も腕も、賢さも技術もいらん。ただ、いっしょけんめいになればいい。アホでもできるいっしょけんめいということを忘れてはならぬ」と教えられました。

先に掲げた牧野先生のお手紙と符合するような師匠のおことばをいただき、私は感動とよろこびで申し上げることばもなく、泣きながら「有り難うございます」とつぶやくのが精一杯でした。しかも、あれから半世紀も経っているとは思えないのです。

いまもなお、師匠のお声が耳に聞えるように思うのです。牧野先生の「からっぽ精神」と同様、「一人の人を助けるために死なしてもらえ」というおことばが聞えるのです。お道開き10年(昭和48年)のお祭のお礼参拝に泉尾教会にお参りしたとき、師匠から大目玉を喰らいました。

「たった10年前に言ったことを忘れたのか? 人一人助けたら、お前のいのちをお捧げせよと言ったのに、お前は生きているではないか…おかげの“ただもらい”か、そんなことがまかり通ってええのか! 10年分のいのちの横領罪の償いは“5分刻み”にしても、まだ足らん! それをごまかして、10年のお礼参拝? これは、どういうこっちゃ!」と、お結界から立ち上がらんばかりの勢いでした。

振り上げられた師匠の右手の拳がぶるぶると震えていました。私は自分の心得違いに気づかせられ、泣いてお詫びを申し上げました。今から40年ほど前のことですが、今もなお私をお見守りくださり、ご厳教くださっています。

徳積みおみちびき

あなたの周辺には、未だお道のありがたさを知らず、病気、災難などに苦しんでいる人々や、天地のご恩を分からずに迷い悩んでいる人々がたくさんいらっしゃるはずです。どうぞ、神心になって、愛の手を差し伸べてあげてください。そして、「人を助けてわが身助かる」事実を実感してください。

おみちびき(人を助けること)によって、神さまから御徳をいただけることを実体験して、親先祖から子孫の末々にいたるまで「真の助かり」を実証することが、御神願祭のお供えとなるのです。

【三宅美智雄】ル・ポン479号-いのちの言葉より転載

*金光教常盤台教会 信徒会報「ル・ポン」は、毎月1回発行されています。”教会とあなたと私をつなぐ”架け橋となる冊子です。

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